プロローグ

3/5
前へ
/85ページ
次へ
またアイツのことを思い出した…。 悲しくなる思いを振り切って、急いで電話をとりに行った。 電話の相手は、東京の大学に行った友人からだった。 彼は、アイツと俺と仲良しで、よく3人で遊んだりした。 ずっと3人で過ごしていた。 男を好きだと言った俺に対して、口には出さないもののかなり応援してくれて励ましてくれて、いつも背中を押してくれた。 電話の内容は簡単なものだった。 向こうは急いでいるらしく、忙しそうに早口だった。 まずは明後日から地元に帰ってくる、とのこと。 別れたことを知らないらしく、3人で遊ぼうと呑気に言っていた。 あと、俺に携帯電話の電源を入れろとまくし立てて電話切った。 だいぶ急いでたらしく、通話時間は5分も満たしていなかった。 電話を切ったあと、やっと携帯の電源を入れていなかったことに気がついた。 そうだ…ずっと切っていたんだ。 真っ二つに折ってしまおうかとも思った。 必要ないと思ったから。 部屋に戻ってみると、つけっぱなしのテレビから音が漏れていて、いろいろ面倒になった俺は電源を切った。 ちょうど泣ける場面を見逃してしまったらしい。 手にしたリモコンには『巻き戻し』ボタンがある。 誰がこんな機能を考えたのだろうか。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加