167人が本棚に入れています
本棚に追加
意味もなくボタンを押してみる。
心地よくフィットしたボタンの中心の窪みをなぞってから、また何度かボタンを押してみる。
戻れたら…。
そんな考えが頭をよぎる。
無理なことだと、頭ではわかっているけれど。
体のどこからか湧き上がってくるこの感情。
名前なんてないこの感情が、俺の中の理性を刺激する。
あえて名前をつけるならば、後悔、だろうか。
全てを思い出すことなど決してできない、2人のたくさんの思い出。
どうしてこうなってしまったのだろう。
別れて2週間も経つのに、色褪せることもない大切な宝物を、忘れないように俺は頭の中の引き出しにしまった。
もう2度と開けることはないけれど、絶対に無くすことのないように鍵をかけるようにして、瞼を下ろした。
開けた窓から入ってくる風が気持ち良かった。
眠りにつこうと思っていたが、先程電話をかけてきた友人の顔を思い出した。
そういえば、携帯の電源を入れていない。
最初のコメントを投稿しよう!