プロローグ

4/5
前へ
/85ページ
次へ
意味もなくボタンを押してみる。 心地よくフィットしたボタンの中心の窪みをなぞってから、また何度かボタンを押してみる。 戻れたら…。 そんな考えが頭をよぎる。 無理なことだと、頭ではわかっているけれど。 体のどこからか湧き上がってくるこの感情。 名前なんてないこの感情が、俺の中の理性を刺激する。 あえて名前をつけるならば、後悔、だろうか。 全てを思い出すことなど決してできない、2人のたくさんの思い出。 どうしてこうなってしまったのだろう。 別れて2週間も経つのに、色褪せることもない大切な宝物を、忘れないように俺は頭の中の引き出しにしまった。 もう2度と開けることはないけれど、絶対に無くすことのないように鍵をかけるようにして、瞼を下ろした。 開けた窓から入ってくる風が気持ち良かった。 眠りにつこうと思っていたが、先程電話をかけてきた友人の顔を思い出した。 そういえば、携帯の電源を入れていない。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加