プロローグ

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床を這って行き、ドアの近くに放置してある携帯電話を手にとる。 手によく馴染んだ携帯を充電器にさす。 暑いな、心の中で呟いてキッチンまで行く。 親は仕事でいなくて、家の中はガランとしている。 冷凍庫の中から棒アイスを一本取り出して食べた。 ひんやりとした冷たさが火照った体にちょうど良かった。 部屋に戻って携帯電話の電源を入れてみると、さっきの友人からの着信があった。 メールはあんまり来ていないと思っていたら、30件以上も来ていた。 メルマガだったり、大学の友達だったり、さまざまだったが、特に大事な用がありそうなメールはないな、と遡っていく。 すると、5日前にアイツからメールが来ていた。 5日も前…だから俺は、このメールを無視したことになる。 電源を入れなかったことを、ひどく後悔した。 そして困惑した。 アイツの方から別れを告げてきた。 なんで今さら……。 メールの内容は一言、『会いたい』 とっくの昔に終わったと思っていた俺の物語が、再び動き出した瞬間だった――
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