316人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぁ……」
声に鳴らない声を上げるマリア。彼女は信じられなかった。
そこには堂々と、赤いバラの庭と白い城が建っていた。
「し、城!?」
ようやくマリアは喉から声を絞り出す。
「あぁ、ここにいるんだ!!」
ラックはニッコリ笑って言った。
(何でこんな所に? こんなに大きいのに誰も知らないの? だ、誰かいる……)
マリアの頭には沢山の疑問が浮かび上がって、また消える。
ただ彼女の目は、庭にいる美少女を見ていた。
「あ、あの人?」
「ん? あぁ、実はさ、聞いたみたいな事言ったじゃん? あれ実は嘘。ごめん」
ラックが急に謝り出すのも、マリアは分からない。
「本当は一回来たって言っただろう? その時に会ったんだ。その、まだ話したりはしてないけどさ」
照れ臭そうに言うラックをマリアは見ず、その美少女に目を奪われていた。
「ねぇ、ラック」
「あっ、はい?」
ラックはマリアを見て首を傾げた。
「話し掛けましょう」
「それは早すぎじゃああぁぁぁっ!!」
ラックの声は最後、叫び声になる。それはマリアがラックの手首を、強く掴んで引っ張ったからだ。
二人が美少女に話し掛ける直前。
「ん?」
雲から太陽が顔を出し森に光が射す直前。
「きゃあっ」
美少女は小さな悲鳴を上げて、太陽から逃げるように城の中に入った。
最初のコメントを投稿しよう!