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なんとか理性を保たせつつ、そのまま暫し男と会話を続けた。
男は話上手で、話の種も多いらしく会話が途切れる事も無く、久しぶりに私も楽しめ良う笑った。
『ふむ、随分と時が過ぎてしもうたな…』
言葉の通り、月も傾いており随分と時が経っている事が分かる。
日の光にこの身を晒す気は無い。
私は夜の生き物だ。
「俺様も今日はそろそろ戻らなきゃね」
‘今日は’その言葉が妙に引っ掛かったのは、仕方が無い。
『そうじゃの、そろそろ帰れ。
越後の刀鍛冶と同じになりたくは無いだろう』
殺してしまうには惜しい。それでももう私の理性も限界だ。
男を逃がしてやる為に、越後の男―刀鍛冶の男だった―を話に出して確信を与えてやる。
ただの死体ではなく、変死体だ。死人の職も、この男なら調べているだろう。
そう思い男の顔に目をやる。
…思った通り、男は目を見開いていた。
「お姉さん、さ…人食い止めれないの?」
『私に死ねと言いたいのか』
日の下に生きる気は無い。
それにもう、この身を日に晒す事などできようもない。
私は今までそうして生きてきたのだ。
そして、これからも。
夜の闇の中独りで。
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