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「………さん!………おかーさん!おかーさん!!」
誰かが私を呼んでいる。
誰だろう?
いや、私は誰だ?
「もう!おかーさん、今日は遊園地に連れて行ってくれるって言ったじゃない!!もう8時半よ!」
…………あぁ。思い出した。何だか、酷く長い夢を見ていたようだ。
私の名前は西口冴子。
1児の母であり、親子関係は非常に円満。夫婦仲も比較的良好。但し最近は夫が帰るのが遅く、浮気をしているのではないかと危惧している。あの堅物がそんな事をする筈が無いと思うが。
杞憂であって欲しい。
そして、今日は休日。娘の祥子を遊園地へ連れて行く約束をしていたのだった。
確認終了。
ベッドから体を起こし、娘と顔を合わせる。
「おはよう。祥子。」
「おはよう祥子、じゃないわ!何を呑気に!……もし約束破ったりしたら、親子の縁を切るわよ!」
「そんな事言わないで。祥子はせかせかし過ぎよ。将来、オバサン臭い女の子になっちゃうわよ?」
「年をとれば、全員オバサンになるの!いいから、急いで!」
「ハイハイ……全くこの子は……」
嘆息しながら、着替え始める。
家には今は祥子と私の2人だけ。夫は仕事に出てしまっている。
せっかくの休日だというのに。全く何を考えているのだろう。あの仕事バカは。
確かに夫が一生懸命働いてくれるおかげで、私はそれなりに裕福な生活が送れているわけだが、これでは精神的に裕福では無いのだ。
精神面、生活面共に裕福な生活を送りたい。
「ホラ!おかーさん!早く早く!」
変な事を考えている暇は無いようだ。
娘に急かされ、朝食を食べる暇も無く、部屋を飛び出す。
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