A Woman Dream

3/15
前へ
/15ページ
次へ
  とあるバス停。 眩しい日差しが降り注ぐ。 季節は春。新たな始まりの季節。 ポカポカとした陽気で心が和む。 遊園地までのバスを待つ最中でさえ、こんなにも穏やかで優しい気持ちになれるのも、ひとえにこの天候のおかげである。 祥子も新しい学年に上がり、クラス替えがあったようだ。仲の良かった子とクラスが離れてしまい、ショックだったそうな。 まぁ、何にせよ楽しそうだ。 「それでねー。達也君たら、酷いんだよ?あたしの事ぶってきたの!」 「へー。それは酷いわねー」 「…………おかーさん、あたしの話聞いてるの?」 「聞いてるわよ。一字一句漏らさずね」 「………まぁ、いいけど。……それにしても、バス全然来ないね」 「そうねーホントにねー」 「…………お母さん……楽しくないの?」 祥子の怒った顔はホントに可愛い。ついつい、からかいたくなってしまう。 「祥子が可愛いからよ」 「えっ………あ、ありがとう」 笑った祥子も、また可愛い。 あぁ。幸せだなぁ。 こんな日常がいつまでも続けばいいのに。 それ以外、もう何もいらない。 それだけで良い一生を過ごせたと素直に思える。ただの暮らしが一番良いのだ。 何時までも、何時までも、幸せでありますように―――。 その時。 突如、轟音。 天地を揺るがす程の轟音。 今まで聞いたことのない程の衝撃音。 ガラスが激しく砕ける音。 タイヤのスリップする音。 周囲の人の叫ぶ声。 沢山の音が辺りに響き渡った。 大きな。 非常に大きなトラックが眼前に迫ってくるのが、見える。 あぁ―――私は死ぬのだろうか。 ならば、せめてこの子だけでも――――― そして――――――――――――――  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加