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「………さん………おかーさん……おかーさん?大丈夫?」
誰かが私を呼んでいる。
誰だろう?
いや、私は誰だ?
「お店入ってから、具合悪いみたいだけど………風邪でもひいたの?大丈夫?」
…………あぁ。思い出した。何だか、酷く長い夢を見ていたようだ。
私の名前は西口冴子。
1児の母であり、親子関係は非常に円満。夫婦仲も比較的良好。但し最近は夫が帰るのが遅く、浮気をしているのではないかと危惧している。あの堅物がそんな事をする筈が無いと思うが。
杞憂であって欲しい。
そして、今日は休日。
娘の祥子を遊園地へ連れて来て、少し休もうという事になり、喫茶店へ入り、テラスで休憩しているのだった。
確認終了。
「ちょっとハシャぎ過ぎて疲れたのかもしれないわね。ま、心配する程の事でも無いわよ」
「ホントに?おかーさん、いっつもホントの事言わないから………無理しちゃダメだよ?」
「ハイハイ。分かったわよ。祥子は本当に心配性なんだから……お父さんに似たのかしら?」
「そりゃ、親子だからね」
「お母さん心配よ。祥子が将来、あんな堅物になるのかと思うと………ヤダわ」
「それは、おとーさんが可哀想だよ。…………おかーさん、おとーさんの事嫌いになっちゃったの?」
急に何を言い出すのだろう。この子は。
…………私の夫こと、西口康隆に関しては、好きとか嫌いとかそういう問題では無いのだ。距離感があるというべきか。
夫は結婚して子供が生まれてからも、私に接するのが何となくぎこちなく、そのせいか私も距離感を取ってしまうのだ。
全てあの夫が悪いのである。断じて私に責任は無いのである。断じて。
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