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「全く、本当に素直じゃないわね」
沙姫が呟く程度に言った。
先程までミュウも怒りを抱いていたが、光太郎の言葉を聞いていてそれも消え失せた。
(やっぱり……変わらないわね)
光太郎を見て、沙姫はクスリと笑う。
「それじゃあ、早く食べちゃおうよ」
弁当を見れば、まだ半分残っている。
「そうだね」
静香が穏やかに言う。
光太郎は食べ終わったのか、弁当を片付けてラノベを読み始めた。
「光太郎、食べ終わったなら先に戻ってても良いよ」
「いや、いい。続きが気になってたから」
自分の世界に突入した。
申し訳ないと思い、沙姫はなるべく早いペースで昼食を再開する。
「ちょっと、沙姫……」
沙姫を呼んだのはミュウだ。
彼女からは驚きの色が見て分かった。
何をそんなに驚いているのだろうか?――沙姫は真っ先にそう思った。
別段、おかしな事は言っていないと思うし、当たり前の事を言ったはずなのだが……
「……」
静香も驚きを表現しつつ、沙姫と光太郎を見ていた。
「?」
沙姫にはその理由は分かろうはずはない。
やがて、ミュウが口を開いた。
「沙姫、いつから〝光太郎〟って呼び始めたのよ?」
ようやく解答が得られた。
それは驚くはずだ。
ミュウも静香も黙っていたが、沙姫は光太郎を〝あんた〟〝あいつ〟呼ばわりしていた。
にもかかわらず、名前で呼んだのだ。
極自然に、違和感もなく――。
それが2人の驚愕の理由なのだと、今更ながらに悟った。
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