創造と破壊

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アリアとの再会を誓った別離の日。 その深夜に時間は戻る。 「それで、話してくれるのか?」 場所は光太郎が居候する上村家――そこで間借りしている部屋があった。 そこには意外な顔ぶれが揃っていた。 まずは光太郎、そして沙姫。 さらにもう1人。 『滝川 清司(たきがわ せいじ)』 頭に画家が被っているであろうベレー帽、眼鏡をして冬でもないのに膝下まである茶色のロングコートを着ている30代位の男。 いかにも怪しさ満天なこの男こそが、光太郎をこの世界――つまるところ彼にとってはアニメの世界――へと連れてきた張本人。 何故意外なメンツであるか――詳細は割愛するが滝川はこの世界には本来存在せず、特に物語の中核を担う人物との接触を避けている。 しかし、これは特例である。 今、物語の中核どころか大黒柱とも言うべき存在が目の前に座していて、その人物に干渉をしているではないか。 理由はごく単純なものである。 “今目の前にいるのは主人公たる沙姫であってそうではない。” 言い方に混乱が生じただろう。 目の前にいる沙姫は、姿は『上村沙姫』そのものではある。 だが、その中身は『上村沙姫』本人ではない。 いわゆる体だけが同じで、魂そのものが――体を支配する意識下の存在が入れ替わったと言うべきか。 故に、滝川が接触を試みれるのだ。
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