あってはならない序章

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「はあ、はあ……」 上村沙姫は夜の公園に居た。 別に運動をしている訳ではない。 相棒のティアラと名の付いた棒を持って、公園を駆ける。 「はあっ!!」 ピンク色の球体を即座に作り、それを飛ばす。 今彼女は戦っているのだ――。 「っ!?」 突然迫った黒い光を沙姫は横っ飛びでかわす。 「くっ」 苦悶の顔を作りながら敵対する者を睨む。 まるで、仇を見るような――いや、実際に彼女は仇として見ている。 今、沙姫の目の前にいるのはそういう存在なのだ。 「なん……で」 今度は目を細め、憤怒の情を表に出す。 だが、そこには迷いが見え隠れした。 戦う事から一歩退いてしまう理由があった。 だって、 そこに、 目の前に いるのは―― 「何でよ」 その人物は沙姫の目前まで迫る。 暗く視界が悪かったが、慣れて来たのか、見え始めた。 「何で、何であんな事をしたのよ!!」 沙姫の怒声は鎮まるはずはない。 そして、そのまま、勢いで彼女は言う。 どうして、どうしてこんな中でその名を叫ばなくてはならないのか? だが、それでも沙姫には言うしかなかった。 「答えなさいよ!!“光太郎!!”」 沙姫の視線の先には……アームズを装着した光太郎が立っていた。 手には黒い刀――名を七支刀という。 それを肩の高さまで上げると、 沙姫めがけて一気に振り下ろされた。
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