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「もう一つ、一番気になる事がある」
光太郎からしても、本題と言って差し支えない。
「沙姫が俺の名前を言わなかった理由を知りたい」
なんとなくだが、沙姫には何らかの力が作用していると思えた。
何故かは分からない。
本当に直感だ。
「そう来ると思っていました」
ベロボーグは涼やかに言う。
「それはこの〝世界〟におけるルールなのです」
―――久々に〝世界のルール〟を聞いたな。
未だに全貌のほとんどを理解していない。
判明しているのは物語の大筋に関わる事態に光太郎が関与できない事くらいか。
「つまり、何らかのルールが働いたから沙姫は俺の名前を言えなかった。けど、そのルールが何かしらの作用でなくなり、俺の名前を言っても――と?」
「正解です」
ベロボーグは実に簡単に正解と言った。
「一体どんなルールだよ?」
「それは言えません」
―――またか。
何度目になる「言えません」か。
逃げる為の常套口になってしまっているではないか。
この〝世界〟について書かれたルールブックでも存在するのか?
本当にそう思えた。
「俺を名前で呼んでたらどうなってたんだ?」
「分かりません。世界がそのようにしていましたから」
「それで〝ルール〟がまた絡んで来る訳か」
いい加減に〝ルール〟に関するヒントが欲しいものだ。
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