創造と破壊

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「とりあえず、そのルールも俺が探せと?」 「はい」 ―――おいおい。 そんな風に言われては光太郎も困る。 第一にルールの全容さえ分からないというのに、探せと言われる始末。 一体どうしろと言うのだ? 「もしかして、投げやりになってないだろうな?」 「いえ、それはありません」 ベロボーグは変わらぬトーンで告げる。 「そうか」 それ以上何も言えない。 無理に聞き出そうとするのを光太郎自身は良しとしない。 「それと、これだけは言っておきます」 ベロボーグは光太郎を見やる。 「何だ?」 「もしも沙姫を脅かそうとしたなら、私はあなたを殺します」 実に無機質な口調で、声音で、目で、指摘された。 その裏には『絶対』の文字が含まれる。 分かりきっていた。 ベロボーグは本気で言っているのだ。 「はんっ」 鼻で笑う。 隣のアラリィも、正面の滝川も何も言わない。 光太郎はベロボーグの目を真っ直ぐ見る。 「そいつはこっちのセリフだ。  沙姫だけじゃねえ、アリアや静香、ミュウ達に何かしようってんなら……」 言葉は一旦切られた。 そして、真っ正面からベロボーグを睨む。 「俺がお前を殺す」 ありったけの殺気を込めて言い放った。 辺りの空気がピリピリする。 これほど重苦しいのは光太郎は初めてだ。 自らのしでかした事に驚きがあった。 「まあ、互いの覚悟は伝わったみたいだね」 アラリィが切り上げだとばかりに言った。 張り詰めていた空気も和らいだ。 「そうだな」 光太郎も乗じ、にらみ合いを終了する。 ベロボーグも同じらしい。 「では、また今度に」 ベロボーグは沙姫の部屋に戻る。 アラリィもならって部屋から出る。 滝川もいつの間にかいない。 「はあ……」 いくつか疑問が解決したものの、しっくり来ない。 それと再び新たな謎が発掘されてしまってやりきれない。 そんなものを含めた溜め息を着いた。 これが、一昨日あった出来事だ。
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