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「まあ、こっから先は行かせないが」
遼太と朔の足が止まる。
2人の前に立ち塞がるのはジョーカーだったからだ。
「こいつがジョーカー」
遼太は初見だった。
油断はなく、ゆっくりと刀を引き抜く。
「なるほど、噂に名高い『上村』の姓の者か」
ジョーカーは淡々と遼太を観察する。
「俺の事を知ってるのか?」
遼太は眉を潜めてジョーカーを見る。
「理由は知らない方が良い。絶望するかもしれないからな」
「?……どういう意味だ?」
彼の意図する事が読めない。
「まあ、いずれ分かるさ」
話はこれで終了とばかりに凸凹した否な石でできた剣――石剣――がその手に握られる。
「なら、洗いざらい吐いて貰おうか!!」
縮地法という相手との距離を埋める移動法が存在する。
それを自ら行ってみせたのが彼、沙姫の兄たる上村遼太だ。
目算だが、約7~8メートルは差があったはずだ。
それを遼太はたった一歩踏み出しただけで僅か1メートルにまで詰めてみせた。
「ふっ!!」
右から横へ薙ぎ払われる黒刀。
ジョーカーは全ての動作を見切っていたのか、石剣を黒刀の軌道上に合わせた。
『ガィィィンッ!!』
とけたたましく響く低い音。
石と鋼が激しくぶつかり合う様だと予想できる者は少ないだろう。
だが、実際にそんな音が耳に聞こえたのだから仕方ないのだ。
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