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ジョーカーから鮮血が飛び出る。
「が……はぁっ!!」
膝を着き、前のめりにそのまま倒れる。
ビシャッ!!と水に飛び込むような音がする。
赤い血の海がジョーカーの真下にあった。
彼もまだ意識はあるようだが、当分は動けまい。
そうなるように遼太は斬ったのだが。
「はあ、たまたまこの刀と相性が良かったから助かったよ」
黒刀を鞘に納め、肩の傷を抑える。
「無茶をし過ぎです。いくら“その刀でも無効にできないとしたら?”」
「まあ、確証はあったからな」
遼太の持つ刀――黒刀――には異能の力を無効にする能力が備わっている。
とは言っても万能ではない。
刀で斬る時には呼吸が大事だと言う事がある。
そして、物には魂が宿るという言葉を聞いた事がある人は多いだろう。遼太の持つ黒刀はまさにその言葉が当てはまる。
それら二つ、刀で斬る時の呼吸を“黒刀そのものと呼吸を合わせる必要がある。”
例えるなら二人三脚のようなもの。
2人の呼吸が合わなければ上手く走れない。
無効化の能力は、遼太の呼吸と本来なら呼吸できない黒刀との呼吸――その2つが合わなければ発動しない。
簡単そうで難しい発動条件なのだ。
まずは黒刀の呼吸を知る所から始まる。
しかも、力が発生するのは黒刀の刀身だけ。そこに当たらなければ意味がない。
戦闘中でも、おいそれとクリアし易い能力ではない。
ジョーカーと刀で打ち合いしていたのが良い証拠だ。
呼吸さえ合えば石剣はとうに霧散し、遼太は早い段階で勝利を収められたのだから。
「とりあえず、ある程度だけでも……」
「承知しています」
どことなく呆れるような返答をしつつ、朔はジョーカーの応急措置を行う。
いつの間にか彼女の傍らには救急箱がある。
「さて、俺も自分の分はやりますかね」
置かれている救急箱から包帯とガーゼ、消毒液を取り出して、肩の傷口の治療を行う。
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