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「今日…クリスマスらしいな」
武藤が呟くと、何故かすごく驚いた顔をしてまどかが見た。
「なんだ?知らなかったのか?」
「はっ!?違います!当然知ってますから!」
…クリスマスイブの日に国見に言われて気付いたのだがそれは言わないでおく。
「武藤先生…クリスマスなんて興味あったんですか?…イヤ、ないはずだ。では何故?」
「おいなんで途中から文語体になるんだ。俺だってクリスマスぐらい知ってるぞ」
そう言うとまだ驚いているまどかを尻目にサイドテーブルにしまっておいたものを取り出す。
そしてまどかの裸の首に手を回すと、その繊細な鎖の金具をとめた。
「…え?」
まどかは何が起きたのか分からず呆然とその胸元に垂れ下がる小さな石に触れる。
「クリスマスプレゼント」
「…えっ!?」
この1週間、まどかには甘んじて逃げられていたが、ちゃんとクリスマスには捕獲できるつもりで準備していた。
まどかは驚きすぎてまだ呆然とネックレスを触っている。
「…驚きすぎだろ」
「だって…そんな……だってだって!」
そしてまどかは情けない顔のままふにゃーっと微笑んだ。
「武藤先生…ありがとう!嬉しい」
その表情があまりにかわいくて自分の顔が赤くなるのが分かる。
それを隠すためにも咄嗟にまどかを抱き締めた。
「先生?」
抱き締められまどかがくぐもった声を出す。
「…なんでいつもムサい格好してるんですか?」
「なんでって…いちいち外見に構ってんのも面倒だからな」
「それは…単にちゃんとするのが面倒なだけ?」
まどかが顔を上げて少し無精ひげの生えてきた頬にそっと触れる。
「それもあるし…。女に囲まれるのも面倒だしな」
そう言うと武藤はニヤッと笑う。
「昔のはさ、多少無理してたんだよ。教師になったばっかで、あーゆー風にあるべきなのかなって」
もともと面倒臭がりなのだが、無理をして爽やかな自分を作っていた。
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