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「…お気に入りの生徒がいて、その生徒がその『爽やかな俺』のことが好きで…なんか無性に虚しくて」
分かってないだろうな~と思いながらまどかを見ると、やっぱり分かっていない様で複雑な表情をしている。
「…そのコに本当の自分を好きになって欲しかったんですか?」
「そうかもな」
まどかが口をとがらせる。
そこには気付くのに、どうして肝心なことには気付かないのか。
武藤は『そのコ』にヤキモチをやいているであろうまどかを見て笑った。
「おまえに言っただろ。『理想の僕に憬れているだけだ』って。『広い世界に出れば分かる』って…」
まどかはきょとんとした顔で少し考えて、思い出したらしく「あ…」と小さな声を出した。
「子供だったおまえに恋愛感情はなかったよ。でも、ニセモノの俺を好きだと言われて悔しかった」
目を丸くして見上げるまどかのくちびるを指でなぞりながら続ける。
「大人になったおまえには本当の俺を好きにならせたかった。俺を変えたのは、卒業式の日告白してきたおまえだよ」
そう言って何故か無反応のまどかにそっとくちづけた。
顔を離すとまだ呆然としたまま武藤を見つめている。
「まどか?」
「…もしかして…」
突然ぼそっとまどかが声を出す。
「もしかして…先生…」
「ん?」
「あたしのこと、好きなの?」
思わず力が抜けてベッドにドサッと仰向けに倒れ込む。
そんな武藤に覆い被さる様にまどかが真剣な顔で迫る。
「武藤先生あたしのこと好きなんですか!?」
「…なんかすげー言いたくない」
「え!?なんでっ!?…やっぱり好きじゃないけどやっちゃえるとか…」
「アホか!」
確かに面と向かって言ってはないが、この期に及んでまだそんなことを言い出すまどかに呆れる。
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