1shot・青い空、赤い大地

3/5
前へ
/81ページ
次へ
「…。」 「……。」 「……ううっ…。」 身体にかかる重みと 頭、頬、右足の嫌に生暖かい感じ…。 これが刃の目覚めだった。 重みで身体が上手く動かない。 それだけでも 今の状況が把握できた。 かなり強めの地震のようなものが起こり、校舎が崩れた。 結果、少なくとも俺を含む同じ教室にいた40名近い生徒は 生き埋め状態となったということ。 状況整理としては まずはそれくらいが分かれば 充分だった。 それさえ分かれば、 後は待つか…? いや…かなり重いが…、 これならいけるか? 俺は潰されないように 身体の傾斜を上手く傾け、 自分に乗っていた瓦礫を 少ない力で押し退けた。 少ない力といっても 力はあるほうだ。 並の人間よりはもっとある。 瓦礫をのけて 身体を起こすと直ぐに 辺りの様子が一望できた。 それを見た刃は 視界に映るものを否定したい。 そんな気持ちで呟いていた。 刃 「…おいおい…夢か? それとも新手の嫌がらせか?」 刃の目に映ったもの。 それは、数多くの瓦礫の山、 赤く燃え上がる町並み、 その赤を映したような赤い空…。 夢ならばそれだけで お腹いっぱいだった…。 だが夢じゃない…。 痛みある箇所を見る。紺色なのに色が分かるくらいに紅が滲んだズボン。 頭から滴って白い半袖のカッターシャツさえも 紅く染めたその痛み…。 それはこれが現実だと 俺に教えるように紅い体液を 吐き出し続けた。 俺は急いでポケットから ガーゼ、包帯を取り出した。 いつか役に立つ。 そう思っていれておいた 緊急キットがこんな時に 役に立つなんて…。 あまりラッキーとは 思わなかった。 自分の鞄さえ見つけれたら もっとたくさんのアイテムがある。 でもその前に…。 俺はまだ痛みが残る右足を 庇いながらゆっくりと立ち、 瓦礫の山を見た。 赤い空には その存在を示そうとするが 朧げある霞んだ太陽。 俺は深く深呼吸すると 瓦礫の山の生存者捜索に 取り掛かった。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加