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…瓦礫をのけては遺体、
のけては遺体…。
捜索を始めて30分ほど…。
俺はそれを繰り返していた。
この山だけで
もう10人近くの
知った顔の魂の抜け殻を
掘り当ててしまった。
同じ高校にはいって
1年間を過ごしてきた仲間達。
今年は2年目で
まだまだ仲良くなれる奴が
いっぱいいると思ってた。
だけど…もう…その10人とは
これ以上仲良くなることは
出来なくなった。
…。
…?
そういえば…他の奴らは
どこにいるんだ?
右腕にあるデジタル時計を見る。
11時27分。
このくらいの時間なら
通行人だっているはずだ。
でも瓦礫から
俺が出てきてから
誰一人として生きた人間を
見たことはない。
何かおかしい…。
やっぱり、これは夢なのか?
…いや…夢じゃないなんてことは
さっきわかった。
なら…なぜだ?
考えながらも
また死体を掘り当てた。
自分以外は
みんな死んでしまったのであろうか?
そんな不安が頭を過ぎる。
すると少し離れた瓦礫から
天に向かって手がのびた。
俺にはその手が瓦礫を
のけた音が直ぐにわかった。
俺は直ぐにその手のもとに
向かっていった。
刃
「おい、大丈夫か?」
声をかけながら、
瓦礫を慎重にのけていく。
そして瓦礫の下から一人の
知った顔を引き上げた。
刃
「…農家!」
農家と呼ばれた少し中太りの
助けられた少年は
やや眩しそうに目を細めてこちらを見る。
刃
「ああ、そういえば、眼鏡がないのか。」
農家
「それなんさ…いきなり揺れたし…地震?」
刃
「俺も地震かと思ったけどさ…なんか違うみたいやで」
農家
「…なにこれ…。」
俺の言葉で辺りを見渡し
ようやく今の奇怪な状況を
目のあたりにしたようだった。
農家
「なーにこれ?夢?
びびるわー」
刃
「夢やったら
わざわざ、あんなもん
つまへんわ」
俺は死体の山の方を見た。
それを見て農家の言葉が
小さくなる。
農家
「…本物?」
刃
「ああ…残念ながらな。」
農家
「…マジかよ…。」
俺達は偽りではなく現実を見ていた。
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