とある手紙、一筋の希望

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硬い木の感触が右手の甲を刺激する。 「お兄ちゃん、起きてる?」 ノックをしながらパン娘は兄に問い掛けた。 返事はない。 ドアノブを掴んで、部屋に入ろうとするが、締錠されたドアは開くことなく、ガチガチと音を鳴らすだけだった。 仕方なさそうに、パン娘は一本の針金を取り出した。 駄人が引きこもってからおよそ二年間、彼とパン娘は幾度となくこの板を挟んだ国境で戦い続けて来た。 慣れて手つきで針金を鍵穴に差し込む。グリグリと右手を右往左往させ、数ミリ単位で針金の先端を動かしていく。 やがてパン娘の指先で、カチリと小気味良い音と感触が伝わって来た
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