序章

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 馬車に揺られ外の風を肌で感じる。 「もう、秋か」  熱い夏が終わりを告げ過ごしやすい季節がやってきた。  リン=グラン=エクシブは依頼により行商人の馬車隊、キャラバンの護衛をしていた。  目的地はまだ遠い。  昼を過ぎたというのに連れの娘は向かいで無警戒に眠っている。  まあ、何かあれば誰よりも早く察知して動き出す野生の勘があるからと、ほっとかれている。 「んっ……かふぅ」  寝返りをうって息が詰まったのか、変な声を出し、また眠りについた。  自らの尻尾を抱き枕に眠る娘。  それを聞いて驚く者もいるだろうが、彼女には尻尾だけではなく獣の耳まである。  娘の正体は九本の尻尾を有する白い大狐。  ひょんなことから共に旅することになった人外の者で、誇り高いと言うわりにはその辺の娘と大差はない。    連れの名は、九尾の白狐ココ。  前回の事件でこの娘の逆鱗に触れた馬鹿がいたが、お陰で怒らすと大変なことになることをエクシブは身を持って知ることができた。
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