二章

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 旅を重ねてきた経歴がありありとわかる分厚くもボロボロのローブにくるまれている髭を蓄えた初老の男。  男はまたカウンターへと向き直ると、ぽつりと問う。 「何が聞きたい?」  今までの光景を見ていたのだろう。  ココは動じることなく返す。 「イグナス、カトレア間の経験はよ」  その言葉に男は二人を交互に睨んでから酒をあおると、やはりぽつりと問う。 「お前、このわしを誰だかわかって聞いているのか?」  明らかに怒気を交えた言葉にエクシブはココを下げようとしたが、当の本人はにやにやしながらこたえる。 「さあての。そんなお偉い方なら警護を雇う金額くらいケチったりはしないと思うがよ?」  その台詞に驚いたのは相手ではなくエクシブだ。  何せ相手は今回の件の雇い主ベルレット一族の長。 「ふん、そうか。お前がラフェスト商会の秘蔵っ娘か……そして」 エクシブをじろりと睨み付けて続ける。 「お前が傭兵リン=グラン=エクシブか。仲間を持たない一匹狼とは聞いていたが、女好きとは初耳だ」
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