二章

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 明らかな挑発行為。  どんな化物であろうと、傭兵を名乗る者は反撃出来ないと知っているからこその言葉だろう。  だが、エクシブは慣れたもので、にやりと余裕の笑みを浮かべると男に返す。 「ただの女ならオレとは歩けない」  のらない相手にいらついてか鋭い威圧をエクシブにかける。  辺りに緊張感が広がり、店員や、まわりで酔い潰れていた者たちが何事かと意識を戻して様子をうかがう。  呼吸の音ですら響いてしまいそうな沈黙。  だが──。 「くく、くっくっく、かはっ、あははははっ!」  突然笑いだしたベルレット。  何がなんだかわからずキョトンとした二人と、まわりの者たちを横目に息を整える。 「くく、ふぅー。いやぁ、すまんすまん。テランから面白い奴らだとは聞いていたが、まさか頭から喧嘩を売られるとは思わなかったからな」  そう言うとエクシブに手を伸ばし続ける。 「グラン=エクシブ、先程は失礼した。申し遅れたがわしはベルレットキャラバンを率いる、グローデン=スカーライ=ベルレット、人はグルー隊長と呼ぶ。荒い口調は許せ、生憎帝国の皇帝にすら敬語は使わぬのでな」
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