二章

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「んっ? キックスのことかよ。確か、リンの──」 「傭兵仲間のキックス。暁部隊、影師の者です」  隠密故に下手なことを話されてはかなわないとふんだのか、言葉を遮るようにこたえる。  ふむと、さも自分がこたえたかの様にココは頷く。 「影師とは、諜報や暗殺などを生業にしているあの影師のことですか?」  傭兵の中でも畏怖の対象とされる業種。  セリアが少し引きながら問うのも頷ける。  慣れた反応なのか、キックスは頷きこたえる。 「その通りです。諜報や暗殺などを生業にしています。……ただ」  認めた上で続けるキックスは、真面目な表情から一転し少し困った顔で言う。 「毎日毎日、人殺しや弱味を見付ける仕事をしているわけではないんですよ。──例えば迷子の子供探しや秘密文章の配達」 「秘密文章?」  仕事例を挙げていたキックスに興味を持ち始めたセリアは思わず言葉を遮る様に聞いてしまった。  文字を文章として読み書きできる者は限られる。  セリアたちの様な商人や、位の高い者たち。  故に心惹かれてしまうのも無理はない。  キックスはくすりと笑ってこたえる。
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