二章

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「わたしの配達した秘密文章は……、恋文でした」 「恋、文?」  キックスは頷き続ける。 「ある身分のさるお方から、ある平民街に住む下働きの娘宛でした。身分の違いで許されざる恋でしたが、その内容の熱さに身体中火照ってしまったことを今でも忘れられません」  話をしていてその時を思い出したのか、赤い顔をして言うキックスにセリアは驚き問う。 「秘密なのに内容を読んでしまったのですか?」  セリアの言う通り、読まなければ内容はわかるわけもない。  それでは秘密の意味すらない。  するとキックスは首を振ってこたえた。 「届け先の娘さんは、字が読めないのです。故にわたしが送り主の心こもる文章を、声にてお届けしたのです」
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