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黄金色の上下する大きな背中を撫でてやると、彼は気持ちよさそうに目を細めた。ぐるぐるとのどを鳴らしているあたり、機嫌がいいらしい。
「ねぇ、アラキさん。明日から3日ばかり研究所へ行くんですけど……。1人でしばらく留守番してて下さいね」
伸びた髪をひっつめた少年が、おずおずと尋ねかけた。床にゴロリと横たわる、自分の体の3~4倍はあろう虎。その顔色をうかがうようにして。
『やだ』
「どーしてですか?」
虎は、尻尾の先でペタペタと床を打っている。少年は、首のあたりの毛をブラシですいてやった。
『お前がいない間、誰がエサ食わしてくれんだ?』
「あ、それなら、研究所の飼育係さんにでも頼んでおきますから」
『お前が一緒でないと食わねえ。それに……』
言いながら、虎は少年を床に組み強いた。体重をかけないように、それでいて逃げられないように。
『俺はお前と離れていたくねぇな。3日だとぉ?3日と言えば72時間、72時間と言えば よんせんさんびゃくにじゅっぷん!俺はそんなに我慢なんぞできねえなッッ!!』
「またそんなわからなぃ事を言う……」
少年があきれたようにため息をついたとき、虎は顔色を変えて仰け反った。
「うわ…ッ!!」
床に転がり、のた打つ。その体はやがて縮みはじめ、人間ほどの大きさになった。全身を覆っていた黄金の体毛は、砂が水を吸い込むように消えてしまった。
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