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私の血が草を伝い、土に染み込んでいく。この血は、この山にとって有益なものなのだろうか?
頭がぼんやりしてくる。--最期に考えるのが、山のことだと言うのも何だか味気ない。楽しかったことを考えよう。
全て楽しかった。ああ、今となっては全てが過去形だ。私は死ぬのか。ここで、こんな、殺されて……。
過ぎ去ったと思った恐怖が首をもたげかけた刹那、脳裏に『あのこと』が蘇った。
『いつも、となりに』
あの子がいる?
ふっと、両親の顔が目の前に浮かんだような気がした。しかしそれはすぐに掻き消えて、幻覚であったことに気付く。
娘がこんな死に方をしたらきっと二人は悲しむだろう。
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