Doubt~疑念

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「…それで?何で俺やキースが、あのミスターアランと対立しなきゃなんないんだ?」 すぐにキースが声を出した。 「ミスターアランって言ったら大物も大物だろ!何がどうなってるんだよ!」 「それを今訊いてんだ。落ち着け。」 キースが口を閉じたところで、電話の向こうのサクティが話し始めた。 (お前等がアパートで殺った奴の中に、ミスターアランの息子がいたんだよ…今手元に写真が届いた。階段のとこでナイフで殺られてる。) ━━━━ダグラスは言った。 「それを殺ったのは俺だ。警察のバッヂなんか見せてきたからリチャードに訊いて、そんな警官はいないって言ったから『天照』だと判断して殺ったんだよ。」 (でもミスターアランの息子は正規のN.Y.P.D.の警官だ…。) 「どうもおかしいぜ?何で警官のそいつらがキースを殺ろうとしたんだ?」 (分からんが、とりあえず状況的にはかなりヤバい。彼の事だ、間違いなく息子を殺した奴を探し出そうとするだろな…すぐにうちのオフィスに来い。詳しい話はそれから聞く。) 電話が切れ、ダグラスは携帯電話をポケットに戻した。 そして説明を心待ちにしているキースに言った。「ミスターアランと喧嘩するのは俺だけだ。彼の息子を殺したらしい。」 「いつ殺ったんだよ!」 「アパートで殺った中にいたんだよ。しかも奴は『天照』じゃない…N.Y.P.D.だ。」 キースが頭を掻いてダグラスに詰め寄る。 「何でシカゴから来たばかりの俺んとこにニューヨーク市警なんかが来るんだよ!」 「そんなの知るか。だが奴等が正規の捜査でお前の家に来たわけじゃないのは目に見えてる…じゃなきゃわざわざ減音器(サプレッサー)なんか着けるかよ。それに正規の捜査ならリチャードだって気付いてたはずだ。」 ダグラスがそう言って煙草を吸い始めると、キースはもう何も言わなかった。 ━━━━いつもと同じ街の喧騒が、何故か不気味なくらい落ち着いたものに聞こえていた。 「これからどうすんだよ?」 キースが訊いて、ダグラスは一息吐いてから答えた。 「サクティと話して…まあなるようにしかならねぇよ。あのオッサンが俺を殺ろうとするなら、俺は殺られる前にやるしかない。」 「相手が『アークファミリー』でも?」 ダグラスはただ溜め息を吐いて、灰を地面に落とした。
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