Doubt~疑念

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* あの薄暗い通路から出て、もうじき1時間は経つだろうか…。 いつもならここ━━━━自室が入っているこのアパートの前に辿り着くまでそれほど時間は要しない。 いつもより歩くペースが遅いせいだろうか。 ━━━━ガランッ! 物音にビクッとして、シェリルは思わず懐のローマンを握りしめていた。 …金属製のゴミ箱の蓋が落ちただけの様だった。その蓋は惰性でしばらく左右に揺れていたが、やがて止まった…。 ローマンから手を離し、大きく息を吐いた。 少し前に経験した今まで経験したことのない非日常的な空間━━━━そして2人の男…彼等は紛れもなく自分とは違う場所で生きてきた人間だ。 …考えれば考える程、取材を続ける自信が無くなってきていた。 取材を始めた当初は大した収穫もなく…でも知らない世界への好奇心は膨らみ━━━━だが、いざそういった現場や人間を実際に目の当たりにした今は、好奇心など微塵もなかった。 アパートに入って階段を上がり、シェリルはやっとの思いで自室がある4階のフロアに着いた。まだ夜まで長いが、しかし体は疲労感でいっぱいだった。 鍵を開けてドアを潜ると、それは一層強まった。何もする気になれず、ただ椅子に腰を落としてダイニングテーブルに突っ伏した。 ━━━━途端、ドアノブが激しく音を立てた。 ガチャガチャ━━━ シェリルは立ち上がって後方数メートル先にあるドアを見た。 誰かが無理矢理開けようとしてるのは明らか…幸い、ドアに鍵を掛ける習慣があったおかげですぐに侵入することはできない様だ。 何も出来ずに立ち尽くしていると、今度は乾いた音がしてドアの鍵の辺りが弾けた。 銃声━━━━ ドンッ━ドンッ━ドンッ━━━ …咄嗟に、ローマンを抜いて発砲していた。 ドアの向こう側ではバタンと音がして、その音でシェリルは我に返っていた。 ━━━━もう、何の音もしない。 銃を握りしめたままシェリルはゆっくりドアに近付いた…ドアに空いた穴の向こう側をその場から確認することは出来ない。 ノブを握って一気に開ききると、男が1人、部屋の向かいに立つ壁に背中を預ける形で床に倒れ込んでいた。 …息絶えていた。 シェリルは脱力してその場に座り込んだ…が、すぐにローマンをハンドバッグに突っ込み、それと上着だけを持って部屋を出た。 ━━━━手にはまだローマンの反動が、いつも以上に色濃く残っていた。
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