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尾行はなく、不審な車も人影もない…。
ダグラスとキースはそれを確認してからオフィスである建物の前に立った。
ドアをノックするとすぐに反応があった。
「ノアの方舟は?」
「永久に沈まず━━━━『ドラゴン』だ。サクティに会いに来た。」
ガチャン、と鉄扉が開いて2人はすぐに中に入る。
「ボス、ミスター『ドラゴン』とキースです。」
門番の男が言うと、奥からサクティが出てきて2人を見た。
その顔は、やはり険しい。
「尾行は?」
「ない。辺りに不審なものもなかった。」
「オーケィ。もうじきリチャードも来るはずだ。上で話そう。」
サクティはそう言って2人と共に階段を上がっていった。
入り組んだ細い廊下にいくつもドアがある。その廊下を歩いていった先、奥のドアを開いてサクティは言った。
「キースは初めてだったな?ここからは俺の自宅兼事務所だ。」
ドアから入ってすぐの部屋は、サクティの仕事部屋兼応接間だった。デスクにはパソコンが鎮座し、部屋の中央にはテーブルと向かい合った2つのソファ。壁には絵画が飾られ、ごちゃごちゃと物がある棚の隣にはまたドアがあった。
一同がそこに座った直後、ドアが開いて部下が顔を出した。
「ボス、リチャードさんが来ました。」
その部下の隣からリチャードが部屋に入ってきて、部下を下がらせてからドアを閉めた。
「俺が最後だな?それじゃあ、会議としゃれこむか。」
ドスッと腰を落としたリチャードはそう言うと、コートのポケットから折り畳まれた一枚の紙を出した。
「こいつがミスターアランのせがれ、『リン・ヴォートル』だ。現役のN.Y.P.D.の警官で、勤務態度は真面目そのもの。父親と仲が良くないのはかなり有名な話らしいな。生まれがD.C.(ワシントン)なのにわざわざここまで来たのも、父親に反発してのこと…って部下が言ってたぜ。」
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