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(あ…レデリーさんですか?)
声の主がシェリルだとすぐに気付き━━━━様子がおかしいこともすぐわかった。
「どうしたんだい?」
(いえ━━━━あの…ちょっとお話があるんですけど…今忙しいですか?)
運転しているレルカーがバックミラー越しにレデリーの顔を見て、しかし何も言わずに視線を前に戻した。
「話なら電話でも大丈夫だろう?話して?」
レデリーの言葉にしばらく黙ったシェリルだったが、そのうち声を震わせ始めた。
(私…ひ、人を殺しちゃいました…。)
━━━━レデリーの頭に疑問符が浮かんだ。
「どういうことだい?冗談にも程があるよ。」
(本当です!へ、部屋に帰ったら知らない男がド、ドアを開けようとしてきてそれで━━━━!)
「まさか…何でそんな事になったんだい?怪我はない?」
レデリーの声にレルカーが何かを察したのか、目的地に着いたわけではないのに車を路肩に停めた。
電話の向こうでは、必死にシェリルが声を絞り出していた。
(私…ド、『ドラゴン』の事を調べたくてそれで…インド料理の店で店員と親しく話してる日系の人を見つけて…話を聞こうとして後をつけたらじ、銃撃戦に巻き込まれて━━━━家に帰ったらあんな…)
フリーライターの勘は恐ろしいな。
レデリーは『日系の人』と聞いて、すぐにダグラスの事だとわかった。
だが、シェリルがダグラスと━━━━しかもこんな早く接触することになるとは予想外も良いところ。
「その日系人と部屋に押し入ろうとした輩は違うんだね?」
(はい…。)
「その日系人から何か聞いたかい?」
大きく息を吐く音に続き、電話の向こうから答えが返ってきた。
(何も━━━━。)
まだ日系人=『ドラゴン』と言う答えには達していない様だな…。
レデリーはそう思ったが、それよりも今のシェリルの事が気になって仕方がなかった。
「良いんだよ。ところで、誰かにつけられたりはしてないかい?」
(…大丈夫です。それで、レデリーさんに最後に1つだけ訊きたいんですけど…。)
「何だい?」
(━━━━━『ドラゴン』に依頼をするにはどうすればいいんですか?)
レデリーはすぐ返した。
「『ドラゴン』などに頼まなくても私のところで匿ってあげるよ。お金の心配もいらないし、絶対安全だ。」
(いえ、いいんです。もうこれ以上お世話になるわけにはいきませんし、それより…その言い方だと知ってるんですよね?『ドラゴン』との接触の仕方━━━━。)
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