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「リチャード…あんた本気でダグラスと殺り合うつもりかい?」
信用できる部下を集めての会議が終わると、2人っきりになった頃合いをみてサクティが言ったのだった。
「奴と殺り合うなんか、ジョークとしてはナンセンス過ぎる。」
━━━━リチャードは冷静だった。煙草を出してくわえると、火を点けてサクティをジッと見据えて続けた。
「あいつとは"フィンガーチップ"がいた頃からの仲だからな…今でも弟か、あるいは息子にも思える。」
「それなのに殺り合うのか?」
リチャードは深く息と煙を吐き、フッと笑って見せた。
「お互い、こういう状況になったら殺り合うかもしれないってわかってたよ。あのバカは承知の上でずっとフリーランスでいることを選んだ…ただそれだけだ。」
サクティは何か言おうとし、だが口を閉じた。
リチャードはそれを見て物悲しそうな顔をした。
「サクティ…お前が言わんとしてることはわからなくはない。だが、あいつもガキじゃねえんだ。ああいう稼業をフリーでやるとどんなリスクがついてくるかってのはあいつもよくわかって━━━━」
RRR…━━━━
リチャードの携帯電話だ。
彼はすぐに手に取る。
「クロスドッグだ。」
(やあリチャード…調子はどうだい?)
いよいよ来た━━━━目でサクティに合図を送った。
電話の主はロサンゼルスの上級幹部会━━━━。
「お疲れ様です。どうかしましたか?」
(ちょっと確認してもらいたいことがあるんだが…君ならミスターアランの事は勿論知ってるな?)
「はい。どうかなさいましたか?」
(それが…彼のご子息が殉職されたらしいのだが、何か知ってるか?)
━━━━やはり連絡が回ったか…。
「はい。N.Y.P.D.の私の部下が確認済みです。」
リチャードの言葉のすぐ後━━━━電話の向こうでふうっと、わざとらしくも聞こえる溜め息を吐いたのがわかった。
(そうか…ミスターアランがご遺体を引き取りにそっちに向かうそうだ。無論、司法手続きの関係上、すぐにとは行かないだろうが…ミスターアランの案内を頼む。いいな?詳細は追って連絡する。)
電話が切れ、リチャードはテーブルに電話を置いてサクティと目を合わせた。
「いよいよ始まるぞ━━━━。」
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