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「まっいごの迷子のこっ猫ちゃん~」
ふんふんと歌を歌いながら暗い暗い夜道を歩く。今日はひとり。なぜならねこが僕を置いて先に行ってしまったから。
ずるいよな。
僕だって雨さえ降ってなければ行きたかったのに、そんな気持ちも露しらず。窓から飛び下りてひとり颯爽と走り出したのはつい数分前のこと。
「にぁー」
「ん?」
今ねこの声がしたような。
しかしキョロキョロと辺りを見回してみても、その姿は見つからない。フワフワの毛をはやした、あの小さな体が。
「ねこー?」
どこいるんだよー。
浮気かこんにゃろー。
「ねこー」
そんな時。
どんよりと曇っていた空がぴかりと光る。
「ッ!!」
はっとして耳を塞ぎ、その場にしゃがみこめば、すぐにそれは聞こえた。
雷の、落ちる音。
地面に響くようなその音に、思わず目をぎゅっと瞑ってしまう。震える肩を抱くようにギュッと握り締め、音が止むのを待った。
大丈夫だと思っていたのに…。
「ばかねこ…」
ねこのせいだ。
ほんとなら今頃は家で眠ってるはずだったのに。
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