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ジャリ…
「…なにしてんだ?」
「にゃー」
そんな呑気な声が聞こえて、振り返り、恨みをこめて睨んでやった。
「ねこだけ来たから…ひびった」
「みー」
「ばかねこ、ばかねこ。お前帰ったらおしおきだかんな」
相変わらず噛み合わない会話。雨こそは降っていないものの、さっきから空がぴかぴか光っている。
そのたびに僕の体がぴくりと反応していることを、彼は気付いているんだろうか。
「恐いのか?」
「…なにが」
そこまで疎くはねぇよ、ってやつ?
そんな簡単には弱味教えないよー…って言いたいとこだけど、もう遅いかな。だって僕一番嫌いだし、雷。見てたら嫌いなの分かるくらいあからさまだろうし。
自覚はしてるのに、こればかりはどうしようもない。
だって、嫌いだから。
「かみなり…」
「恐くないよ?嫌いなだけで」
「みー」
「恐くないってば」
「恐いから嫌いなんだろ?」
「みゃ」
「ふたりしてなんだよー。弱味なんか握ってどうするつもり?」
「にゃー」
「まっ、なんて卑怯な!!」
「…なにを言ってんだ」
呆れたような視線が痛いよ?
だってねこは絶対卑怯なこと考えてるとしか思えないんだよね。だから、僕とねこの会話は意外に通じてると思う。
「それより、雨なのに今日もいたの?」
「…あぁ」
「暇なんだね」
「お前には言われたくない」
「まっ!!」
失礼な。
僕だって忙しい時は忙しいんだぞ。ていうか、夜に忙しい人なんてそうそういないよ。
「どーでもいいから、うちまで送って」
「あぁ」
「みゃー」
「…あぁ」
「え?なに?分かるようになったの?猫語」
雨の日の散歩。
それは意外にも、楽しい一時を味わえた。
ねこのおかげだとは、悔しいから言ってやらないけど。
でも、仕方ないからまたたびは勘弁してやるか。
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