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「うっし!!行くか、ねこ」
「み」
…短く鳴くな。
かわいすぎてゴロゴロしたくなるぞ。
昨日は結局、あれから行くことはなくて。ちゃんと日にちを跨いで今から出発。
気合いをいれて靴紐をしっかりむすんで。パーカーのフードを被って、左右が繋がっているポケットにねこを入れて暗い夜へと飛び出した。
昨日のピカピカ光る雷が嘘だったみたいに今日は晴天。雲はなく、ちらほら散らばる星を見上げる。
「…気持ち悪い」
昔から、星空を見上げて綺麗だと思ったことはなかった。
無感動に見上げては、その散らばるゴミのような光に自然と眉間に皺が寄る。漠然と浮かぶその言葉は『気持ち悪い』の一言。
そんな僕を変だと一蹴してくれたのはどこのどいつだったかな。
「みゃー」
「そう?僕には汚く見えるけど」
「にゃ」
「変じゃないよーだ。感性は人それぞれなんだから」
「みゃん」
「あ、分かる。僕も星よりは月のが好き。気が合うね、ねこ」
「……にー」
「なにその間」
相変わらず失礼なねこ様だな。僕と気が合うっていうののどこが気に入らないのさ。そうそういないんだよ?
まぁ、月のが好きっていう人はいくらかいるかもしれないけど。
ほら、例えばアイツとか。
「こんばんにゃー」
「…………」
「…ちょっとしたオチャメ心を視線だけで傷付けないでよ」
なんだい、なんだい。
そんな冷ややかな視線向けなくてもいいじゃないか。
それにしても、本当いつでもここにいるんだなー。
「こんばんわ?」
仕切り直しの挨拶。
やっぱり大切なコミュニケーションのひとつだよね、挨拶って。基本中の基本てやつ。
できないやつは幼稚園からやり直しするべきだとわりと本気で思ってたりする。
「……ばんわ」
「ばんわって何。最初が聞こえないよ」
「こん…ばんわ」
んー。
ギリギリ?
なんかシャイボーイだし、この人。ていうか、挨拶のどこが恥ずかしいの。
「にゃ」
僕のポケットから飛び下りて、トテトテとそいつに近付いてねこはてし、っと前足を靴の上に置いた。
出た、ねこ流挨拶。
かわいいよね、これ。
「…………」
無言のままねこの体を撫でるそいつの手に、擦り寄るねこはマジかわいい。脳殺ってこういうこと言うのかな。
いや、今時でいう萌えというやつかな。
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