4月2日。

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ザワザワザワザワ。 やっぱり夜はドキドキする。やめられないとめられないのキャッチフレーズがぴったり。 「ねこー、あんま遠く行くなよー」 揺れる草木にじゃれながら、月明かりに照らされるねこの姿は美しく。 昨日洗ってあげたばかりだからね。 サラサラとオレンジの毛が風に揺れる。 「…名前」 「ん?」 「ねこ…なのか?」 「うん、そだよ」 「…………」 呆れた顔にまたにんまり。 そうそ。その顔が見たかったんだ、なんて言ったら怒るかな? いやいや怒らないね。 きっと、また不機嫌そうに眉を寄せるだけ。 「だってねこはねこだし」 「…はぁ……」 「幸せが逃げた」 「うるさい」 「あはは」 月夜に浮かぶ雲。 夜だから見えにくいけど、昼間の雲より好き。白い雲より月に照らされた不思議な色の雲のほうが。 「静かだねぇ」 静か静か。 暗い暗い。 夜だから当たり前か。 その後の会話はなくて。 ねこが満足げに帰ってきたからそのフワフワ毛波を撫でて抱き上げた。 「バイバイ。また明日」 「みー」 ヒラヒラ手を振りまた明日。 会うかどうかなんてわからないけど、これは僕なりの別れの挨拶。 明日が明日とは限らない。 明日が明後日で昨日が明日かもしれない。 つまり言葉なんてそんなもの。 約束なんてそんなもの。 「ねこ、帰ろっか」 「みゃー」 これが僕とねことアイツの二日目の夜。 ヒラヒラ背中ごしに振る手に、あいつが小さく手をあげたことなんて、肩ごしにアイツを見ていたねこしか知らないよ。
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