50人が本棚に入れています
本棚に追加
4月3日。
「みー」
「しょうがないだろ?だって…」
いつものように窓から空を見上げてみても、いつもの月は見えない。
「雨だもん」
だから今日は行かない。いや、行けない。
雨だからという、そんなシンプルな理由。
ねこだって、せっかくのホワホワ毛を濡らしたくはないだろ?
だから今日は会わない。いや会えない。
アイツだって今日もあの場所に来てるとは限らないし、来てたとしてもアイツは僕の家を知らない。きっと、知ってたとしても、会いにはこないだろうけど。
「残念だね」
じっと外を見つめるねこの頭を撫でる。
散歩に行けないのは残念だけど、今日はねこのホワホワを堪能して眠りにつこう。
今日は先に寝るなよ?いつも僕より早いんだから。
撫でてるといつの間にかゴロゴロ喉を鳴らしながら寝てるんだよね。
ずるいヤツ。
「みー…」
「なんだなんだ。僕と二人きりは不満だとでもいうのか」
失敬なヤツだな。
そんなにアイツが気に入ったの?
「みゃっ!!」
「へ…?」
ぴょーんと飛び降りた小さな体。
先ほどまで手に触れていたはずのホワホワがない。
「ねこ!?」
窓の下を覗きこめば、ねこが走り出していくその姿を見つけた。
思わずため息をつく。
ねこが走り去っていったのはいつもの散歩コースの方。きっと今日もいるであろう、アイツのところ。
「…大丈夫、かな。案外」
再び空を見上げて小さく呟く。
雨は降ってるけど、雷はなってないし。行こうと思えば行けるかな。
「ねこー、帰ってきたらおしおきだかんなー」
本人はこの場にいないけど、そんなことを言ってみる。
おしおき、おしおき。何がいいかな。
マタタビをねこが届かないところに吊しとくとか?
あ、それでいこう。
帰ってきてからのことを想像し、笑みを浮かべる。
ドキドキと高鳴る胸元をぎゅっと握る。
帽子をかぶって傘もって。時刻は深夜、12時前。
珍しく雨の日の散歩。
まぁ…ねこのせいなんだけど。
最初のコメントを投稿しよう!