序章

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某所海域。 領海ギリギリのその場所で一隻の船が巡航していた。 彼らは何も怪しい集団ではない。その領海をもつ国の軍人達である。 元々の発端は、この領海付近というデリケートな場所で巡視船が一隻音信不通になったことだった。 彼らはその船の捜査及び原因の究明の為に訪れたのだ。 とはいっても捜査に乗り出してからかなりの時間がたった今も巡視船は発見出来ず、又、手がかりも見つかってはいないのだが…。 「こちら甲板。海は忌々しいほどに平和で、異常なし。」 甲板で見張りをしていた船員(仮にジョンとしよう)は欠伸を噛み殺しながら言う。 いつもなら、そんなジョンの態度に叱責の一つでもとぶのだが今回は何もなかった。 この任務、上の方からは国際問題に発展する危険性のある重要な案件とまで言われてここまで来たのだ。この捜索で少なくとも痕跡ぐらいは見つけたいところ。 だというのに海は平和なままで既にどのくらいいるのかわからないくらい時間も経っている。船内にいる上官は焦りにかられ、今のジョンの行動を咎める余裕がないのだろう。 ジョンとしては出来ればこのまま何も起きずに基地に戻りたかった。 軍人とはいっても国防意識に燃えているわけじゃないし、手柄をたてて昇進してやるという野心もあまりないからだ。ジョンにとっては毎日を楽しく暮らせればそれでよかったのだ。
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