畢生

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 かの男が年寄りに尋ねる。 「『死』とは何でしょうかね。」と。  年寄りは答える。 「一生のロマンだ。」と。  死とはロマン。  延々続く夢物語。  死とは帰結。  一生のドラマの走馬灯。  男がまた年寄りに尋ねる。 「では『生』とは何でしょうかね。」と。  年寄りはまた答える。 「変幻自在なロマンだ。」と。  物語は後からいくらでも変えられる。  後で手を加えてさえやれば、どんな完結だって望めるのである。 ―――――――――――――――  恐らくは孤独死であろう、白骨化した遺体がとある団地の一室で発見された。  遺骨は供養程々に集団墓地に投げ捨てられた。
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