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「それは、最初から出来る人間なんていませんよ。」
ことりが笑いながら呟くと、涼輝も「そうですね。」と笑い、パソコンの液晶を見た。
「この頃の演奏……
懐かしいな。皆と楽しみながらも真剣に音楽だけをしていた時代だったような気がします。」
「本当に音楽好きなんですね。」
「ええ、全く。」
涼輝は思いにふけていると、突然あることを思い出した。
ポケットの中から急いで何かを取り出す……
店で買ったリードだった。
箱を開けようとする。
「何ですか、それ?」
ことりは首を傾げながら涼輝に聞いて来た。
「ああ、実はその……
木管楽器もやってまして、そのリードです。」
涼輝は中身を取り出した…
五本の内、四本のリードが真っ二つに折れていた。
「あちゃ……。」
涼輝は真っ二つになったリードを一本手に取り、マズそうな顔で眺めていた。
「ご、ごめんなさい!!」
ことりは頭を下げ、深々謝った。が、涼輝は「はは…!」と笑いながら折れたリードをしまい、彼女を見た。
「大丈夫ですよ。
リードならまだ普通に買えるような手軽な値段ですから。それに、あれだけ殴られてまだ一本無事だったということだけでもツイてると思いますし。」
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