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涼輝がありがたそうに応えていると、機体移動用の車両が来る。
運転手の体育系だが顔つきがよい女性がこちらを見るや否や、笑顔でこちらを見てきた。
涼輝はキャノピーを開け、機体からゆっくりと降りてからキャノピーを閉める……
「-お疲れ様です!
上谷二尉!!」
女性がビシッと本格的に敬礼してきた。
「そちらこそ、お疲れ様。」
女性に対し、涼輝も交番の駐在さんのように微笑みながら敬礼を返す。
彼女の名前は高坂由希。
(こうさかゆき)
涼輝の機体の整備を担当している。
「こんな雨の中、よくご無事で……」
「いや、君ら整備班のおかげだ。
君らのおかげで今日も機体の機嫌は良かったよ。」
由希は「いえいえ……!」と顔を少し隠しながら照れる。
「明日も頼むよ。」
「はい!」
涼輝は雨で髪が濡れないように手で覆い被せるようにし、走って基地の中へ向かった。
「私は私の仕事を済ませないと……」
由希は両手を合わせ、伸ばしながら気合いを入れる。
その時、先輩の整備士が由希のもとへと走ってきた。
「-由希、ご苦労さん!
また自ら進んで仕事か?」
「え?えぇ……まぁ。」
先輩は車両の助手席に「よっこらせっと。」と座った。
「-由希、お前さ……」
「何ですか、先輩?」
由希が聞き返すと、先輩はオホンと咳き込み、ニヤニヤと笑う。
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