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深夜0時。私は音を発てない様に扉を開けた。
目の前には、寝息を発ててぐっすりと眠る妻がいる。僅かに開いたカーテンの隙間から、昇り切った月の光が妻の寝顔を照らした。
薄らと見える細い線が、彼女の閉ざされた瞼から顎へと伝っていた。私はそんな彼女を見て少し眉を寄せる。
妻の乱れた髪を踏まない様に私は彼女の横を通り過ぎた。すぐ横の、布団に毛布を被せて横になる。
眠れない。珈琲を飲んだからか。それともつい先程起こったことが原因なのか。
どちらでも良いか。ただ、これからどうしようか。少し面倒なことになってしまった。
些細なことだったのだが、いつの間にか、両者怒鳴り合う程の大喧嘩に発展、という話は良くある。
だが、激昂した妻に包丁を向けられる、というのは流石に無いだろう。必死に宥め、半ば強引に押さえ込んで寝室に放り込んだのだが、やはり一緒の部屋で寝るというのは不味いだろうか。こんなことは夫婦生活で初めて、いや、人生でも初めてなので勝手が良く分からない。
だがやはり、夫婦として一緒に寝た方が良いだろう。そう思い立ったが故に、今私はここにいる。
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