ラブゲーム

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「そっこく居場所もしくは走って行った場所を吐け。さもないとこれからのテスト、ノート貸しをやめるぞ」 『ここです』 僕の言葉を聞いた瞬間に、クラスメートは顔色も変えずに大半は教壇横にある棚を指差し、その近くにいたものは一番下の戸を開けた。 そこにコンパクトに収納されていたのは一樹。 なんと器用なヤツだ。 一寸の隙間もなく見事に体育座りで収まっている。 「う…裏切りものぉおおッーーッ!!!」 「まだ逃げるかッ!!」 叫びながら教室を出ていく一樹を再び追い掛ける。 また勝負かと廊下にいた生徒の視線を集めながら僕たちは飽きもせずに走り続けた。 「なぜ逃げる一樹!!」 「お前が追い掛けてくるからだろーッ!!なんでついてくんだよ!!」 「貴様が逃げるからだ!!」 このままではラチがあかない。下手すれば授業が始まっても走り続けるハメになるかもしれないな。 目の前にある背中。 走り去っていくアイツの後ろ姿に結局僕は負けたのだ。 「待て廊下は走るな!そして逃げるな好きなんだ!」 「俺だって好きだバカ野郎!!」 「んなっ!!なんで僕がお前にバカよばわりされなきゃならんのだ!!…って、え…?」 ヤツは今…なんと言った…? 走るスピードが落ちていく。 それは前を走っていた一樹もだった。 徒歩に近いスピードで一樹に追い付き、その背中の真後ろに立つ。くるりと振り返った一樹の顔は真っ赤で、それは走っていたからなのか今の衝撃的な告白の羞恥からなのかは僕には分からなかった。 「一樹…」 不意にその体に抱き締められる。力強い感触は、僕がずっと求めていたものと同じものだった。 ゲームオーバー。コンティニューしますか? 「……あー、ちゃんと付き合わないか?」 そう小さく呟かれた言葉に、僕は一樹の腕の中で小さく頷いた。 しかし…。 「勝負はどうなるんだ…?」 結局、どっちが先に惚れたかなんてわからない。 僕だって、いつ一樹なんかに惚れてしまったかなんて分からないのだから。 「お互い惚れたら負けだな。勝負は引き分けだ」 そう言って一樹はニヤリと笑った。 「そうか…引き分けか」 「うん」 結局僕たちは、互いに10勝目を手に入れることはできなかったというわけだ。
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