ラブゲーム

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「よーしーひーろー!!学校行くぞーっ」 窓の外から聞こえる声にうんざりとする。毎朝のことながら、叫んだ張本人はどうやら僕を不機嫌にさせることが得意らしい。 でなきゃ、温厚な僕をこう毎日のようにイライラさせることなどできるわけがない。 一度だけじゃ気が済まなかったのか、なおも叫び続けていたそいつの叫びを遮るべく、スパンッと思いきり大きな音を立てて玄関戸をスライドした。 「お前は僕の耳が老人なみに遠いとでも思っているのか?だとしたらそれは大きな誤解もしくは勘違いだ。そんな大声で呼ばれなくとも聞こえている」 「おーおー、今日も絶好調ですね駿河くん」 舌が、と付け加えるその言葉にピキリと額に青筋が浮かんだような気がした。馬鹿にするような口調が余計に苛立たしい。 「君は相変わらず馬鹿さが絶好調なようだな。何度言ったら分かるんだ。大声で、僕を、呼ぶな。バかずき」 バかずきこと一宮一樹。悔しくも幼馴染みで隣の家に住み、さらに高校も一緒だという何ともいえない腐れ縁だ。幼児のころから親同士が仲がよかったため、この馬鹿とはかれこれ17年の付き合いだ。 ……時々、僕は誰かに呪われたんじゃないかと思うことがある。 「やだなー照れちゃって。別に聞こえないから大声出してるわけじゃないから」 「じゃあなぜだ」 「嫌がらせ」 ケロリと答える一樹に僕は我を忘れてこの場で撲殺しそうになった…なんてことはいつものことだから別にいいが、嫌がらせということはいくら注意しても無駄なことなんだと知り絶望した。 これからも毎日あの大声を聞かなくてはいけなくなる。隣近所から家に苦情が来たらどうしてくれようか。いっそその口を糸で縫い付けてやろうか。 「じゃ、行くぜー」 「だいたい、学校くらい一人で行けるというのに毎朝毎朝飽きもせずに僕を迎えにくる君の心情を疑う…って聞けよッ!!」 淡々と述べる僕を置いて、ヤツはすでに100mほど離れた場所にいた。 ヤツは自転車だからその距離は徐々に離れつつある。
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