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というか迎えにきといて僕を置いてくとはどういう了見だ!!
「早くしないと俺様に負けるぜ?よしひろくん。まぁ元より勝たせるつもりなんてさらさらないがなー」
鼻唄混じりのその声に、握り締めた拳がブルブルと震える。
カチャリとメガネを上げ、僕はすぐさまクラウチングスタートの体制をとった。
「っの…待てばかずきーーーッ!!」
ダッシュ。
とりあえず地面を蹴って蹴って蹴りまくった。スピードはだんだんとあがり、一樹も危機を察したのか悠長にこいでいたペダルの速度をあげた。
こうして僕たちの一日は始まる。
僕らは幼馴染みだが熱い友情とかそういった類のものはなくて、かといって友人を越えた親友とかでもなくただただライバルなのだ。
「僕とアイツの仲?ただの腐れ縁だ」
こんな縁、さっさと切ってしまいたいと僕は切実にかつ毎日願っている。
…叶う気配は一向に見受けられないが。
現在戦績は黒星が九個ずつ、今度は絶対負けられない。
「さぁさぁ、恒例のゲームが始まるよー!!一口100円から、さぁ賭けた賭けた!!」
「いつから僕らの勝負は賭事の対象になったんだ?」
いつものごとく、一樹は馬鹿面丸出しでどこから取り出したのかも分からないハリセンで机を打ち付けた。
クラスメートたちは何が楽しいのか一樹の遊びに便乗するかのようにぞろぞろと集まっては賭け金を箱の中に入れていく。駿河に賭けるだとか一宮に賭けるだとか、今日は奮発して1000円賭けるだとか、そんな声が絶たない。
「はい、受け付け終了~。間に合わなかったヤツはご愁傷様。俺に賭けたヤツはラッキー。思わぬおこづかいが入ったな」
「待て一樹。なぜ僕が負けるという前提なんだ」
「俺が勝つから」
またしても当然かのように吐かれた言葉。クラスの何人かは僕の震えている握り締めた拳に気付いたらしくおろおろとしていた。
なんとか殴りたい衝動を抑え、僕は残念だな、と一樹に言い放つ。
「十勝目は僕が貰う。吠え面かかせてやるからな」
「へん、俺が負けるかよ」
っのヤロウ…。
マジで殴る5秒前、クラス一団となって僕の腕を掴み体を抑えていた。
このクラスは学校行事なんかの時よりもこういう場合の方が一団となりやすい。
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