ラブゲーム

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僕は心の中でニヤリと笑い、一樹が鞄を持とうとするのをスルリとかわした。 「そんな…悪いよ。大丈夫、いつものことだし」 そう言ってニッコリと笑みを見せれば、度肝を抜かれたように一樹は目を見開いた。 そして一瞬ニヤリといつもの笑みを見せては、爽やかな笑みに張り替える。 「いつも大変だろ?だから持ってやるって。遠慮しないでよ、俺が持ちたいだけなんだからさ」 スルリと鞄を僕の手から奪った一樹はそれをカゴの中に入れる。 なにが持ちたいだ。自転車のカゴにいれるだけじゃないか。そこらへん、一樹はツメが甘い。 「あ、ありがとうっ…」 頬を赤らめ、少しうつ向く。 …正直自分の言動にでさえ鳥肌がたつが、仕方がない。勝つためだ。 10勝目だけは絶対に譲れない。 白星は僕だ。 今日は笑顔の攻防戦が教室内で繰り広げられていた。どちらも相手をなんとかして惚れさせようと、片方はかっこよさをアピールし、片方は健気さをアピールしていた。 「なーんて…」 なにが健気さだ。 なにがかっこよさだ。 アイツの狙っているかっこよさは僕にとっちゃ恐ろしいものだ。 僕が狙っている健気さは自分で言うのもなんだが吐気を催すほど気持ち悪い…。 と、思っているのは僕だけらしく…。 「今日の一宮ってなんかかっこいいよな!!」 「いやいや、一宮より駿河だって!!マジかわいくねぇ!?」 そんな声が教室はおろか、学校内どこででも聞けるような状態となっていた。 内心かっこいい? どこが。 かわいい? 目腐ってんじゃないんですか。 って感じだ。 そんな回りの反応を一樹はどう思っているのか、常に爽やかな笑顔を振り撒いている。そんな一樹に負けまいと、僕もクラスメートにすら笑みを振り撒いている。 そして、そんな平和な学校生活の放課後…事件はおこった。 「なにすんだよっ!!離せっ!!」 今の現状を説明しよう。外面必死に抵抗してようと僕はいつでも心の中は冷静だ。そして今の状態を一言で表すというならば、僕は強姦されかけていた。
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