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娼館「エメラルド」 表向きは会員制高級クラブとして昼間から開いていて豪華な食事を提供し、 夜は生演奏でクラシックが聞けるクラブになり、 真夜中には2階が売春宿になる。 館の前まで来たのも初めてなのであくまで噂で聞いた範囲の情報だが警察内部にいる常連客からの情報なので間違いは無いだろう。 蠍の男はこの館の中で何をしているのだろうか。 食事? クラシック鑑賞? それとも… 追って中に入ったところで蠍の男には接近できないと判断し、館から出てくるのを待つことにした。 しかし可笑しな話だ。 警察の鑑識をしている俺が、どこの誰かもわからない男の尾行をし、今は男が入っていった娼館の前で張り込みをしている。 さっきまでの俺の生活からは考えられない話だ。 俺は近くにあったガードレールに腰を下ろす。 シンジュクの特にこういった繁華街では今の俺のように道端に屯っている人間は珍しくはない。 このまま張り込んでいても違和感はないだろう。 俺はポケットからキャラメルの箱を取り出し1粒を口に放り込んだ。 ここから長期戦になるかもしれない。 そんな俺の予感は的中してしまった。 正に長期戦だ…開封したばかりだったキャラメルの箱は既に空。 時計を見れば既に2時間が経過していた。 張り込みってしんどいな…だから張り込みにはあんパンと牛乳なんだなと納得しかけた時… パンッ! 館の中から乾いた音がした。 間違いない…銃声だ。 俺は咄嗟に館の入り口に向かって走り出した。
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