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運良く警察官採用試験に合格し、東北にあるセンダイという町に別れを告げてシンジュク警察署の鑑識課機動鑑識係に配属された俺には悩みがあった。
それは「何もない」こと。
自分で言うのも何だが仕事はきちんとこなしている。
しかしそこにやりがいは無い。
ただ淡々と上から言われた仕事をこなす日々。
ただそれだけ。
「犯罪の無い社会を作りたい」とか「みんなが安心して暮らせる国にしたい」とかそんな立派な考えがあってここに来たわけではないが、子供の頃に憧れた「おまわりさん」はこんな人間だったのだろうか。
「今の世は正義感の強い警察は絶滅危惧種。
己が都合を最優先するクサレオマワリが蔓延る世」
だなんて誰かが言っていたが正にその通りだ。
上層部の腐敗や汚職。
自治体の為政者と手を結んで様々な不正を働いていることは珍しくない。
組織の下部にいる人間でも、ごくわずかの賄賂に屈して犯罪を見逃してしまうことも日常茶飯事。
特にシンジュクは警察官の不正が目立つ。
用心棒代と称して商店から金をせびるような者もいるし、裏組合と手を組む者までいる始末。
更にシンジュク警察署内部には、東地区の犯罪組織、南地区の武装宗教団体とのパイプが縦横無尽に張り巡らされており、その傾向が特に強い。
子供達の憧れの「おまわりさん」なんてほんの一握りだ。
そのどちらになりきることもできず過ぎていく時間に何も見出せない。
そんな日々を過ごす俺にある日転機が訪れる。
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