3人が本棚に入れています
本棚に追加
「その通りだ。そうやって立派な神になるんだ。人間も努力なしで何も出来まい。」
トリゾウの言っている事は間違いではない。何もしないで出来たらそれこそ神だ。その神でさえ努力をしている訳だ。人間である俺が努力しないのはおかしい事であるのだ。
「おい、コショウは無いか?ラーメンと言ったらコショウだろ。」
「ちょっと待って。確かこの辺りにあったはずだけど…」
俺は調味料を置いている所を探した。
「あったあった。…ん?入って無いや。そう言えばこの前切れたんだった。」
俺は空になったコショウの瓶を振った。
「仕方ないな。ならワシの力で…。」
トリゾウはそう言うと何かを呟きだし、左右の手を振り出した。
「でやーっ!!」
トリゾウの手が光ると目の前にコショウが現れた。
「すげぇ!!本当に魔法が使えるんだ。」
俺が目を丸くしているとトリゾウは自慢げにしていた。
「神だったらこの位は朝飯前だ。今は晩飯だから晩飯前だな。」
そう言うと俺をチラッと見た。ここで笑うと調子にのって何度も言ってくる。だから俺は聴かなかった事にした。
「それはそうと神様。天界には帰る方法は無いの?」
トリゾウは落ち込んで下を向いている。ゆっくりと顔を上げ俺を見た。
「天界か…。帰る方法はある。」
「ナニナニ?」
「それはな…。」
チラッと俺を見た。しかし、すぐに視線を落とした。よほどさっきの事がショックだったのだろうか?あのつまらないオヤジギャグ。仕方なく俺は唐突に笑った。
「朝飯じゃなくて晩飯…あはっアハハハ…。神様面白いな。アハハハ。」
引きつったように笑った。だが、トリゾウは目を輝かせた。
「そうだろ。面白いだろ。我ながら良い出来だと思ったんだ。お前じゃなくてワシが芸人に成ろうかな?」
何故か俺の嘘を見抜けず自慢げにしていた。
「ところでさっきの話の続きは?」
俺はそれが聞きたいだけだ。
「さっきの話?あっそうだったな。天界に帰る方法だったな。それはワシを見つけた人間の願いを100個叶える事だ。」
トリゾウは腕を組んで頷いている。
「って事は俺の願いって事?」
俺は指を自分に向け目を輝かせた。
「その通りだ。電信柱の所で見られたからな。」
トリゾウは悔しそうにしている。
「えっあれはやっぱり神様だったの?ネズミかと思った。」
「ネズミとは失礼だな。」
最初のコメントを投稿しよう!