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「うん、悪くない」
ごわごわに水分を吸った画用紙を見て、ひとつため息をついた。
水彩画は苦手だ。けれど、時間をかけて丁寧に描けば自分が望むような出来になるのだ。
また一つ、成長。
それにしても今日の出来は良いな。
何と言うか、凄く目を引く。描いた本人が言うべきではないのだろうが、今までの水彩画で一番の出来かもしれない。
まぁ、そう感じる心当たりはあるのだが。
蛇口を捻る。
使った筆にたっぷり付着した絵の具を水で洗い流した。今日もお疲れ様、なんて言いながら。これって相当変かもしれない。今に始まったことじゃないし、気にしないけど。
とめどなく流れ出る水を見ながら、こうして水は光の反射を受けるのかと関心した。頭に描くイメージが浮かぶ。また一つ、成長出来た。
こうして身近な現象を学び、知っていくのは大切なことだと思う。絵の勉強になるし何より楽しい。まだまだ頑張ろうって気になれる。…こんな単純な私だから、あの人に欝陶しいと思われてしまうのかな。
蛇口を強く閉めた。八つ当たりだ。さすがに、絵に関係するものには出来ない。
こんな時でも、私の頭には絵のことしかない。
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